COLUMNS リサイクルコラム

Vol.4 2024年9月29日

若い世代のゴミに対する意識

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高校生からの突然の依頼

当社に高校生からのインタビュー依頼が届いたのは、ある日のことでした。発信元は、さいたま市立大宮国際中等教育学校の高校2年生。彼らは学校の「探求学習」の一環として、ゴミの回収について興味をもっているようで、廃棄物に関する質問をしたいというものでした。

高校生が廃棄物に興味を持つこと自体が珍しかったため、依頼が届いたときは少々驚きましたが、同時にとても嬉しく感じました。若い世代が環境問題に関心を持ち、自ら学びを深めようとしている姿勢は、将来の社会をより良くしていく可能性を感じさせます。特に、彼らがゴミ処理のコストや回収の仕組みにまで着目していることは、私たちの業界にとっても励みとなる話題でした。

実は、彼らは高校生ビジネスプランコンテストに出場する予定で、そのプラン作成のため早急に情報を収集する必要があるとのことでした。そのため、すぐに日程を調整し、インタビューは2024年9月19日に実施されました。高校生は男女4人のグループで、限られた時間の中で、いかに彼らに有益な情報を提供できるかが大切なポイントになりました。

ゴミの基本と廃棄物業者の役割

インタビューの冒頭で、私はまずゴミの基本的な分類から説明を始めました。ゴミは大きく分けて「産業廃棄物」と「一般廃棄物」の二種類があり、それぞれが異なる運用と厳しい規制のもとで扱われています。高校生たちはこれらルールについての認識はもっていたものの、思った以上の厳格なルールがあることに驚いているようでしたが、これは一般的な反応かもしれません。

産業廃棄物は、主に工場や事業所などの事業活動によって発生する廃棄物で、「廃プラスチック類」や「汚泥」等、特定の20種類のことを指し、これらを適切に回収や処理するためには行政からの許可が必要となります。私たちのような産業廃棄物業者は、ゴミを回収するための「収集運搬許可」、処理をするための「処分許可」を保有しており、この許可を得た業者だけが産業廃棄物の収集運搬や処分を行うことが可能となります。

産業廃棄物の処理に関しては、一般的に民間の処分場が運営する施設で行われます。これらの施設では、焼却や破砕処理等さまざまな方法で処理が行われ、ゴミが適切に処理やリサイクルされるために、廃棄物処理法やその他、環境法令の決められたルールの中で運用され、もちろん回収についても同様で、産業廃棄物の回収や処理は厳しい規制のもとで行われており、行政と業者が協力して社会に不可欠な役割を果たしているのです。

一般廃棄物は、家庭から排出される家庭廃棄物と、事業活動で排出される事業系一般廃棄物があり、それらの処理は一般的には行政が運用する施設で行われます。回収については、行政または民間の業者で行われ、産業廃棄物同様、ルールがある中で運用されています。

高校生たちは、これらの説明を熱心に傾聴してくれ、廃棄物業界の法規制やライセンスの話に興味を持ち、その重要性を理解してくれたようでした。ゴミ処理にかかる規制やライセンスの存在が、ビジネスにも大きな影響を与えることを学んでくれたのは、私たちにとっても意義深い瞬間でした。

高校生のビジネスアイデア「街中にゴミ箱を設置する」

インタビューが進む中で、高校生たちが本当に知りたかったことが明らかになってきました。それは、彼らが考えたユニークなビジネスアイデアに関するものでした。彼らは、街中にゴミ箱を設置し、ポイ捨てを防止することを目的としたプロジェクトを考えており、それに伴うゴミ回収の費用や運用の仕組みを知りたいというのです。

彼らのプランは、ただゴミ箱を設置するだけでなく、ビジネスとして収益化するというものでした。そのアイデアの一つが、「ゴミを捨てる際に1回10円の利用料を徴収する」という仕組みです。利用者からの少額の料金で、ゴミ箱の運営費用を賄おうという発想は斬新で驚かされました。

さらに、このビジネスモデルには「広告」を利用するという工夫もありました。具体的には、例えば某ハンバーガーチェーン店の前にゴミ箱を設置し、そこに商業施設の広告を載せる。また、商業施設内にゴミ箱を設置し、今度はハンバーガーチェーンの広告を載せるといった、相互に広告スペースを提供し合うというものです。彼らに無償で広告を提供できるというメリットを与える代わりに、ゴミ箱の設置に協力してもらうという仕組みを作り上げ、ゴミ箱を至る所に設置し、ゴミのポイ捨てを無くして街をきれいにするというのです。ゴミ箱を汚いものとして見るのではなく、広告媒体として活用し、ゴミのポイ捨てを無くすという啓蒙活動も促進するという、社会的意義の高いビジネスモデルです。

彼らのプランは、環境問題への啓蒙活動とビジネスの両立を目指したものであり、非常に興味深いものでした。無償の相互広告により、ゴミ箱設置スペースを確保し、街中にゴミ箱を設置することでポイ捨てを防止し、その運営を利用料で支える。このシンプルかつユニークな発想には、若い世代ならではの柔軟な視点を感じました。

課題と提案:現実的な解決策を模索

高校生たちのアイデアは非常に魅力的でしたが、現実的な課題もいくつか浮かび上がりました。まず、ゴミ箱の設置や運営には予想以上にコストがかかるという点です。彼らは、都内にゴミ箱を数百か所設置し、それらの定期的な回収、処分及びゴミ箱のメンテナンス費用を1回10円のゴミ捨て料金で収益を得ることを考えていたようです。しかし、ゴミ箱の設置費用、回収のコスト、そして運営全体を考慮すると、利益が出るどころか、赤字が発生する可能性があることがわかりました。

また、ゴミ箱の設置場所やそのデザインも重要な課題です。街中にゴミ箱を設置する場合、衛生面や匂い、虫の問題など、衛生的なリスクも考慮しなければなりません。特に人が多く集まる場所にゴミ箱を設置する場合、これらの問題が顕在化する可能性が高いため、具体的な対策が必要です。ここで考えられるのが、ゴミ箱を特定の廃棄物に絞ることです。例えば、ペットボトルや段ボールなど、再利用可能な資源に限定することで、衛生面の問題をある程度回避できるかもしれません。

このような現実的なコストの問題を解決するためには、まず運営コストを削減する方法を見つけることが重要です。例えば、彼らが考えていたような、ゴミ捨て料金を徴収するだけではなく、広告収益を得ることが出ければ、その収益によって運営を支えることができるかもしれません。また、ゴミ箱の設置場所を限定的にして、まずは試験的に運営することで、コストを抑えつつビジネスモデルの成功の可能性を探ることが考えられます。

こうした課題に対して解決策を見つけることは、ビジネスを成功に導く上で非常に重要です。高校生たちが直面するこれらの現実的な問題を一緒に考える中で、彼らの視野も広がり、アイデアを現実にどう実現するかというステップへと進化していきました。

学生たちへのアドバイスとビジネス展開の可能性

高校生たちが考えたゴミ箱設置ビジネスモデルは、社会貢献とビジネスの両立を目指したユニークなものでした。しかし、現実的なコストや運営の課題を克服するためには、より効率的な手段を見つけることが求められます。そこで私は、いくつかのアドバイスを彼らに伝えました。

まず、ゴミの回収を自社で行うのではなく、既存の回収業者に委託することです。回収作業を外部に委託することで、運営負担を大幅に減らすことができます。高校生たちは当初、自分たちでゴミの回収プロセスの運用を考えていましたが、廃棄物回収には専門的なライセンスが必要であり、回収業務は意外とコストと手間がかかるものです。そこで、すでに運営実績のある業者に任せることで、ゴミ箱設置や広告マッチングに集中できるようにするという選択肢を提案しました。この方法は、彼らにとっても現実的かつ効率的な解決策と受け止められました。

次に、広告を活用した収益モデルの可能性をさらに深める提案です。彼らがすでに考えていた広告付きのゴミ箱というアイデアは、非常に革新的です。しかし、これを成功させるためには、広告主となる企業との緊密な関係が重要です。例えば、相互広告により相乗効果が生まれるマッチングを探求することです。ハンバーガーチェーンと商業施設との相互広告も悪くはないですが、ハンバーガーチェーンと若者向けアパレルブランドの相互広告であれば、ハンバーガを食べた学生がアパレル広告を見て認知が深まるかもしれない、またアパレル店でハンバーガーチェーンの広告を見たら食べたくなるかもしれない、というような相乗効果が生まれる相互広告であればニーズが高いかもしれません。また、大手企業だけでなく、地元の小規模なビジネスとも提携することで、より多様な広告主を確保することができます。また、広告のスペースをただ提供するだけでなく、設置場所やデザインを工夫し、広告効果を最大化する方法も考えるべきです。

さらに、ゴミ箱を特定の目的に絞ることも一つの戦略です。例えば、ペットボトル専用のゴミ箱を設置することでリサイクル意識を高めたり、段ボール専用のゴミ箱を設けて物流業者との提携を図るなど、ニッチな市場に特化することで、効率的な運営が可能になります。このように、限られたリソースを活用し、ターゲットを絞ることで、事業のスケールに応じた適切な運営が実現できるでしょう。

高校生たちは、これらのアドバイスを真剣に受け止め、プロジェクトの現実的な実現可能性をさらに考え始めました。彼らの柔軟な発想と環境への意識が、このビジネスプランを支えており、将来的に大きな可能性を秘めていると感じました。

ゴミ箱設置に対する社会的な意識

高校生たちのアイデアの根底には、「ゴミを捨てる場所が少ないからポイ捨てが増える」という社会的な問題意識がありました。確かに、公共の場所にゴミ箱が少ないことは日常的に感じる問題です。例えば、外で飲み物を購入した後、ゴミを捨てる場所を探して苦労した経験を持つ人は多いでしょう。しかし、この不便さが逆に人々の行動や意識に影響を与えている側面もあります。

実際、ゴミ箱の数を減らしたことが、ゴミの削減や消費行動の変化を促す効果があるという指摘もあります。例えば、ペットボトルを買った後に捨てる場所がないという経験を繰り返すことで、無駄な購入を控えるようになる人もいるかもしれません。さらに、買い物をするときに「ゴミを持ち歩きたくないから簡易包装の商品を選ぶ」など、環境に配慮した行動に繋がることも考えられます。

一方で、ゴミ箱の設置が便利さを提供することで、ゴミが増えるリスクもあります。ゴミ箱が増えれば、人々は気軽にゴミを捨てられるようになりますが、その一方で、ゴミの量自体が増加するというトレードオフが存在します。これは、街の景観や衛生面にも悪影響を及ぼす可能性があるため、単純にゴミ箱を増やせば問題が解決するというわけではありません。

また、ゴミ処理にはコストがかかるという現実も、人々に十分認識されていません。高校生たちが考えた「ゴミを捨てる際に10円の料金を課す」というアイデアは、ゴミ処理のコストを消費者に意識させる効果があるかもしれません。ゴミを捨てるという行為が、単なる日常の一部ではなく、実際に費用が発生する作業であることを多くの人が理解することで、ゴミ削減の意識が高まる可能性があります。

さらに、環境問題に対する若者の関心は近年ますます高まっています。SDGs(持続可能な開発目標)の目標12「つくる責任 つかう責任」でも、資源の有効利用や持続可能な消費と生産が強調されています。高校生たちは、ビジネスを通じてこの課題に取り組もうとしており、社会に対して「ゴミ処理に対する意識変革」を促すアイデアを形にしようとしています。これは、環境と経済の両立を目指す新しいアプローチと言えるでしょう。

彼らが目指す「ゴミ箱を使ったビジネスモデル」は、ただのゴミ箱設置ではなく、社会の意識変革を伴う重要なプロジェクトとして考えることができます。ゴミ処理のコストや利便性、さらには消費者の行動変容に焦点を当てたこのモデルは、環境問題の解決に向けた一つの可能性を示しています。

未来を見据えた若者の挑戦

今回の高校生たちとのインタビューを通じて、私たちは彼らの斬新なアイデアと強い意欲に大いに刺激を受けました。彼らが提案した「無償の相互広告により街中にゴミ箱を設置し、10円の利用料で運営する」というビジネスモデルは、社会的な課題を解決しつつ、ビジネスとして成立させようという挑戦でした。

若者たちがただ環境問題に関心を持つだけでなく、それをビジネスの形で解決しようとする姿勢は、非常に心強いものがあります。彼らは、単にアイデアを出すだけでなく、現実的な問題に向き合い、コストや運営面での課題に対する現実的な解決策を模索していました。ビジネスを進める上で直面する壁を理解し、それに対して柔軟に対応していこうとする姿勢は、将来の成功につながる重要な要素です。

また、環境問題とビジネスの両立というテーマは、現代においてますます重要になってきています。SDGsの目標達成に向けて、企業や個人がどのように資源を有効に活用し、持続可能な形で経済を発展させるかが問われています。彼らのような若者が、環境への配慮をビジネスの中核に据えたモデルを考案することで、今後の社会における持続可能な成長に貢献していくことが期待されます。

もちろん、今回のアイデアにはまだ多くの課題が残されています。ゴミ箱の設置場所、回収方法、広告収益の確保、そしてゴミ処理のコストなど、クリアすべきハードルは少なくありません。しかし、彼らはその課題を一つ一つ乗り越えていくことで、社会的意義を持つビジネスモデルを構築する可能性を秘めています。

このプロジェクトが成功すれば、彼らのゴミ箱ビジネスは単なる環境対策にとどまらず、社会全体の意識変革を促すものとなるでしょう。「ゴミ処理にはコストがかかる」「環境問題には個々の責任がある」といった認識が広まり、持続可能な社会の実現に向けた一歩を踏み出すきっかけになるかもしれません。

彼らの挑戦を支援することは、私たちにとっても学びの機会でした。未来を見据え、環境と経済の両立を目指す若者たちが、どのようにこのプロジェクトを発展させていくのか、非常に楽しみです。今後も彼らのような若者が、環境保護とビジネスのバランスを追求し続けることで、持続可能な社会に向けた一歩を踏み出していくことを心から願っています。

企業の産業廃棄物処理を企業価値に変えるサポート

当社は、廃棄物処理に関する長年の知見と、多くの処理業者との強力なパートナーシップを活かし、企業が廃棄物処理を単なる「コスト」ではなく「企業価値」に転換するサポートを行っています。廃棄物処理は、環境に配慮した持続可能なビジネス運営の一環として注目されており、それを効果的に行うことが企業のブランド価値や信頼性を高める要因になりつつあります。

例えば、企業が廃棄物の適切な処理とリサイクルを徹底することは、環境に対する責任を果たすだけでなく、資源の再利用を促進し、コスト削減や廃棄物の減量に貢献します。さらに、SDGsへの取り組みとしても、廃棄物削減は企業の社会的責任(CSR)や環境・社会・ガバナンス(ESG)の評価において高く評価される要素となります。こうした環境への積極的な取り組みは、投資家や消費者からの信頼を得るためにも非常に重要です。

マイルド産業は、さまざまな廃棄物処理におけるベストプラクティスを提供し、企業が自社の廃棄物処理を効果的に管理できるよう支援しています。これには、リサイクルの最適化、廃棄物の発生を抑える工夫、そして廃棄物処理コストの透明性を確保するための仕組みづくりが含まれます。さらに、私たちのパートナーである多数の廃棄物処理業者やリサイクル業者と協力することで、各企業のニーズに合った最適な処理方法を提案し、効率的かつ持続可能な廃棄物管理を実現します。

廃棄物の管理を通じて企業価値を高めるためには、単に法律を守るだけでなく、環境に配慮したビジネスプロセスの実践が不可欠です。マイルド産業は、こうしたプロセスの導入をサポートし、企業が環境負荷を軽減しながらもビジネスの成長を図るための戦略的なパートナーとなります。私たちは、長年にわたる廃棄物処理の経験と知識を駆使して、企業がその廃棄物管理を競争力に変え、さらなる発展を遂げるお手伝いをしています。

私たちの目標は、単なる廃棄物処理の提供者ではなく、企業の成長を支えるパートナーとしての役割を果たすことです。持続可能な未来を築くために、廃棄物の管理は企業にとって重要な課題であり、私たちはその課題に対して最善の解決策を提供することをお約束します。これからも、環境に配慮した廃棄物処理を通じて、企業価値の向上をサポートしていきます。

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